4月28日-30日、キッズドアの学習会で勉強し高校入学を果たした27名とスタッフ7名で、学習会の卒業旅行として宮城県石巻市にある自然体験施設「モリウミアス」に行ってきましたので、ご報告いたします。

今回の旅行は、昨年に続き、みなさまの寄付によって実現いたしました。子どもたちにとって貴重な体験をすることができました。心から感謝いたします。

◆漁船に乗り込み、ホヤの水揚げに大興奮!

1日目、朝7時過ぎに東京を出発。モリウミアスに到着したのは渋滞で遅れて夕方になってしまいました。疲れが出ている子もいましたが、Aくんは「ここにいるみんなは受験を頑張ったからモリウミアスに来られたんだ」と誇らしげに話していました。 また、Bさんは自然あふれるモリウミアスが自分の故郷と環境が似ているようで懐かしさを感じているようでした。

2日目、起床後、部屋・お風呂・外のチームに分かれて掃除を行い、朝食が済んだら自然体験です。

「海プログラム」では3つのチームに分かれ、麻縄作り、網の貝付け、ホヤの水揚げを体験しました。

漁船に乗ってみるととても風が気持ち良く、全員大興奮!

Cくんは、初めて触るホヤの感触にとまどいながらも嬉しそうな様子で、もぎ取ったホヤの間から出てくる、小エビや小ガニにも興味津々でした。

引き上げられたホヤをもぎ取る際に恐る恐る手を伸ばしたDさんは、その場でホヤを試食したら苦かったようで「大人になってから食べる」と遠慮気味に言っていました。

漁師さんに「この船は何代目ですか?」と質問したEくんは、津波で半壊した船を修理して海に出ているという話を真剣に聞き入っていました。漁船を降りる際には「ホヤおいしかったです!ありがとうございます!」と元気な声でお礼をし、夕食でもホヤをたくさん食べました。

Fくんは、ホヤの感触に慣れず、さばくのに苦戦していましたが、徐々に手さばきが軽やかになり、さばき終わると、「楽しかった!あの感触がくせになった!」とホヤがすっかりお気に入りに。

ホヤをさばく包丁使いがとても上手なGさんは、他の生徒やスタッフにもさばき方を教えるほど。スタッフに「ホヤガール」と呼ばれ、弾けるような笑顔を見せてくれました。

◆野外炊飯、掃除、ベッドメイキング・・・みんなで助けあって

夕方の野外炊飯では、着火しても少し経つと火が消えてしまうため、燃えやすい葉っぱを探して葉っぱの置き方や風の送り方などを工夫しながら釜で炊飯を行いました。

昨年も参加したHくんは、どの葉っぱが燃えやすいかをみんなにレクチャーしながら、「自分が失敗したらみんなのご飯がなくなるからプレッシャーだ・・」と言いながらも楽しそうに参加。米を研ぐチームは大きい釜でお米を流さないように助け合いながら研ぐのが大変そうでした。

Iくんは、お風呂掃除で困っている女子チームを見て、 自ら手伝いに行ってくれました。

Jさんは、夜寝る前にまだシーツの準備ができていない子がいるのに気づき 「手伝おうか?」と声をかけ、シーツをかけるのを手伝ってくれました。

みんな、他の子が困っていることに気づくと、すぐに手助けできる子たちです。

夜には、満天の星空を見上げ「きれいだね」と話しながら、恋愛話に花が咲いているグループもあれば、それぞれの課題に取り組んでいる子たちもいました。

Kくんは、電気工事士の勉強、Lさんはレポートの宿題、Mくんは騒がしいなかでも集中して元素記号と英単語の勉強、あまり勉強が好きではないNくんは、数学の宿題を持ってきて「ここ教えて」と質問しにきました。 モリウミアスにきても勉強する姿勢は本当に素晴らしいです。

◆体力もコツも必要な森での作業。工夫しながら力をあわせて

3日目の朝食後、帰りのバスの中で食べるおにぎりを1人2つ、 梅と肉みその2種類をつくりました。「大きさが難しい」と言いながらもみんな上手に作っていました。なかでも、Oくんは人よりも大きなおにぎりを作ろうと挑戦していました。

「森プログラム」では皮むき間伐を行いました。最初にのこぎりで木の株に切り込みを入れ、竹を使って皮をはがします。のこぎりを使い慣れていないため、切り込みを入れるのも一苦労。白い粉が出るまで切り込みを入れたら、次は木の皮を上まで剥がします。

最初、斜面を下るのを怖がって友達の手を借りてやっと移動できるくらいだったPさんは、徐々に一人で歩けるようになり、傾斜があっても木の皮をはがすことができるまでになりました。

Qくんは、より長く木の皮がはがせるように、引っ張る向きや角度、斜面での位置取り等、工夫をして作業に取り組んでいました。指導員の方にも、「よくここまで長くできたものだ」とほめてもらい、照れながらもとても嬉しそうでした。

粘り強く木を削り、木の皮をはがしやすいように周りをサポートしながら木の皮をむいていたRさんは、指導員に「素質がある」と言われ、「この素質を活かすために、モリウミアスに就職したい」と笑顔で話していました。

◆楽しかった思い出を胸に

昼食後、東京に向けてモリウミアスを出発しました。

Sさんは、家から数日離れられたことがいい息抜きになったようで、帰る時には「もっと居たい」と言っていました。

Tさんは、高校に入学してから日々の不満を吐き出す機会がなかったのか、 おしゃべりが止まらず、帰りのバスの中で写真を見ながら、「自分がこんなに楽しそうな顔をしている!」と嬉しそうに話し、 東京に近づくにつれ「このまま夢の中にいたい」「現実に戻りたくない」としきりに言っていました。

「モリウミアス」への旅行は、昨年に続き、2度目です。

一昨年は、高校に進学後、新しい学校で友達や先生に馴染めず、厳しい家庭環境などで中退や不登校になってしまう生徒も少なくありませんでしたが、昨年「モリウミアス」に参加した生徒から中退する生徒は激減しました。

今回は、キッズドアの5つの学習会で勉強していた子どもたちが参加しました。久しぶりに会った仲間もいれば、初対面の子どももいます。森と海の自然体験、食事作りや清掃などみんなとの共同生活、この素晴らしい体験はお互いの絆を深め、生きる力を育んだと感じます。みんな、とてもいい表情をしていました。

東京での生活は、いろいろ大変なこともあると思いますが、自然のなかで工夫したり力をあわせたりした楽しい思い出があれば、きっと前向きに頑張れると思います。

この旅行は、たくさんの方からの寄付で実現しました。改めて御礼を申し上げます。

そして、来年の新高校1年生も、ぜひ、モリウミアスに連れていきたいと思います。

長文を最後までお読みいただき、ありがとうございました!

これからも、キッズドアへの応援を、どうぞよろしくお願いいたします。

(キッズドア 地方創生室 コーディネーター 玉木絵梨)