生活保護家庭に生まれたら「高卒で就職」という貧困の連鎖を止める第一歩

私も委員として参加させていただいた  審議会の議論を経て、生活保護世帯からの大学等への進学をすこしでも後押しする方向になりました。

https://mainichi.jp/articles/20171212/k00/00m/040/056000c

現在、日本の全世帯の大学等進学率73.2% 、生活保護世帯は33.1% です*1

生活保護世帯の子どもが、高校卒業後、大学や専門学校に行くことは、皆さんが考えている以上に非常に大変です。

まず、少し前まで、生活保護家庭の子どもは、高校をでたら、就職しなければなりませんでした。

生まれる時に親を選ぶわけにはいかないのに、生活保護家庭だと「進学ができない」に自動的に将来が決まってしまっていたのです。

さすがにこれは今の時代に合わないというので、「世帯分離」という制度ができました。

これは、同じ家に住みながら、大学進学する子どもは、制度上生活保護から抜けることで「高校卒業しても大学や専門学校に進学してもいい」という制度です。

誤解が多いのですが、

「生活保護を受けながら大学に行く」のではなりません。

本人が「生活保護を抜けて」自活をしながら大学に通うのです。

もちろん、学費も生活費も全額自分で払います。

生活保護の受給している親からは、もちろん学費や生活費の援助は一切ありません。

基本的には、ものすごく勉強をして学費免除などを取るか、貸与型奨学金を目一杯借りて学費を払い

さらに自分の生活費は、アルバイトなどでまかないます。

例えば、東京に住んでいる生活保護家庭の子どもが、家から通える大学や専門学校に通う場合には、

家を出て、新たに下宿などをするよりも、同じ家に住んで大学に通った方が生活が安定します。

これは、大学に通う子どもにメリットがあるのではなく

他の家族が安定するという点が非常に大きいと思います。

皆さんは子育て家庭で生活保護を受けているご家族とはどのようなおうちだと思いますか?

実はごく少数である不正受給のバッシング報道などのイメージがあるかもしれませんが、

私たちが知るご家庭は、母子家庭でお母様が働きすぎて体を壊していて働けない状態 だったり、障害のあるお子さんや介護が必要な親御さんなどを抱えどうしても十分に働けない子育て家庭など、家庭自体が、非常に不安定で皆でなんとか助け合って生活をしています。

大学や専門学校に進学するような優秀な子どもは、その家庭を実は「支えている」、家族から「頼りにされている」のです。

だからこそ、そのような子は、同じ家に残りながら家族を支えながら、大学や専門学校で学ぶのは合理的だと思います。

しかし、現在の「世帯分離」という制度では、その子一人は、世帯から抜けるということで、

その1人分の生活保護費(生活扶助と住宅扶助)が、ごっそりと減ってしまいます。

同じ家族が同じ家で、同じ生活をし、さらに一人の子どもは、大学や専門学校に通って学費や生活費がたくさんかかるのに、

収入が大きく減るという状況です。

私たちの学習会に通う子どもたちを見ていても、この制度を知って

「自分が苦労するのは構わないけど、家族に苦労をかけてまで大学には行けない。」

「やはり生活保護家庭の子どもが大学に行くのは、わがままなんですね。家族にしわ寄せがいく。」

と進学を諦めます。

こんな制度はおかしいと、私たちは「世帯分離」の制度の撤廃を求めていました。

今回、制度の撤廃までは至りませんでしたが、

住宅扶助の減額をなくし、さらに大学や専門学校に通う際に、進学準備のお金が一時金として支払われることになりました。

これに対しても、「税金を渡すなんておかしい。」という声も上がっているようですが、大きな誤解です。

生活保護を受けている家庭では、子どもは高校生の時に、大学や専門学校の生活に必要なお金を、アルバイトなどで貯金することはできません。

もし、それが見つかれば、「不正受給」とみなされ、稼いだお金を国に変換します。

生活保護を受ける家庭では、将来のために「貯金」をすることができないのです。

手持ち資金0円で、大学や専門学校に通えますか?

不可能ですよね?

家を出て、アパートを借りたり、最低限の家電品を揃えるにもお金がかかります。

そもそもアルバイトをしても、日払いのバイト出ない限り、お金がもらえるのは1ヶ月先です。

この1ヶ月、手持ちのお金がなければ、飢え死にします。

だからこそ、一時金が必要なのです。

ちなみに、この一時金は、生活保護家庭の子どもが、高校卒業後就職する際にももらえます。

高校卒業後、就職しても、進学しても、生活保護から出た直後に当座のお金が必要なのは同じなのです。

子どもは、自分の親を選べません。もしかしたらあなただって、生活保護家庭に生まれていたのかもしれません。

もしか知ったら、今日、あなたが事故にあったり、事件に巻き込まれたり、会社でひどいいじめにあって働けなくなって生活保護を受けなければならなくなるかもしれません。

その時、あなたは、自分の子どもに「高校を出たら働いてくれ。」と言えますか?

生活保護家庭に生まれた子どもも、将来の夢や希望を持って成長できるように

生活保護家庭の大学進学をバッシングせず、ぜひ応援してください。